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■ 開発人生記_________機械工学を学んだことを生かして事業に必要な様々な機械を開発、その道のりを公開

開発人生記(その19) メガソーラー発電所基礎杭の開発

メガソーラー発電所基礎杭の開発

 今から10年位前に、政府は脱炭素を進める方策の一つとして、民間に太陽光発電所設置を推奨し、普及の後押しとしてFIT制度を設けました。 FIT制度とは発電した電気を既存の電力会社に一定期間定額で買い取らせることを義務付ける国の制度です。 この制度が始まったことで、メガソーラー発電所の投資収益が確定的に見込めるようになったため、全国でソーラー発電所建設ラッシュが始まりました。

 当時私は建設業を主力とした会社を経営していたのですが、メガソーラーの企画や建設をする会社からソーラーパネルの架台基礎杭打設の見積もり依頼が来るようになりました。

 当時はメガソーラーの建設が始まったばかりでしたので、基礎杭も様々なものが登場してきた時期ですが、当方に依頼が来た工事の杭は中国製のスクリュー杭とコンクリート製のH型杭でした。 しばらくはこの杭で効率的な施工機械と施工法を考えながらいくつかの現場を施工しました。

       

   

 初めはメガソーラーの基礎に対する知識は皆無でしたので、言われるまま施工していたのですが、次第に中国製のスクリュー杭は細いので土質によっては支持力に懸念があり、コンクリート製の杭は正確な位置に建込することが難しく、ずれた位置を僅かでも修正しようと横方向の力をかけると割れてしまうといった欠点が見えてきました。 

 そこで理想を追求したところ、中国製の杭より太い鋼管杭でコンクリート杭のように1本で上部架台まで直立したものが良いということに気付きました。 この構造ならコンクリート製の杭と同様の支持力が得られ、多少の位置修正でも割れることは無く、中国製の杭に必要なブレース(斜材)が不要なため点検や草刈り等の管理もしやすくなります。 また、すべて鋼製とすれば発電所を廃止し撤去するときにコンリート廃棄物が無く、鋼製杭はスクラップで販売することが出来ます。 こんなことを考え検討しているうちに、今から作るソーラー発電所に対する投資勧誘(発電所オーナーになる誘い)が来るようになりました。

 自分がオーナーの発電所であれば是非自分が理想と考える杭で施工したいと思い、基礎杭の開発に着手しました。

 まず、杭用の鋼管は規格がSTK-400 外径114.3㎜ 厚さ4.5㎜ を選定しました。 この鋼管の埋設部にスクリュー状の羽根を付けました。 地中に回転圧入しやすくする為です。 圧入する機械は「開発人生記 その10」で紹介した「スクリュー・プレス工法」の施工機を用いることとしました。 

     


 こんな前提で描いた図面が下記になります。

 

 
   

 この図を基にいろいろな業者から見積もりを取り、コスト計算をしてみました。 ソーラーパネル架台は傾斜を付けるため杭長は2種類あります。 この平均長で計算すると、コンクリート製の杭は1本あたり8,000円程度であったものが鋼管杭にすると12,000円程度になります。 こんなに高くては全く競争力がありません。 今度は真剣にコストダウンの検討に入りました。

 まず、鋼管材料のコストダウンです。 最初は建築材料の構造用炭素鋼管規格STK400としていましたが、ほぼ同じ規格で杭用の鋼管が有ることが分かりました。 杭用の鋼管は寸法精度などの基準が緩いため大幅に安いのです。 それに加えて納入運搬費のコストダウンを計画しました。 普通、鋼管はメーカーから問屋の倉庫に入り、注文が入るとその倉庫で注文長さに切断して注文者に配送されます。 私が必要とする長さは2.5mと4mの物です。 メーカーでの製造時に5mと4mに切断してもらい30トントレーラー1台分をまとめて買って倉庫に入れずに直接納品してもらうのです。 こうすれば運搬回数積み降ろし回数も減り、問屋での切断もなくなります。 1MWのメガソーラーであると杭を1200本近く使います。 重量にすれば47tくらいになりますから30トントレーラー1台分の杭材料はすぐに使い切ってしまいます。 到着してから5mを半分に切断する必要が有りますが、メーカーも了承してくれて大幅なコストダウンになりました。

 次に鋼管の防錆加工のコストダウンに取り掛かりました。 メガソーラーはFIT(電力固定買い取り制度)期間だけでも20年という長期であり、その後も売電可能であるため架台の防錆はしっかりしたものにしなければなりません。 溶融亜鉛メッキが最も理想的なのでその見積もりをとると単価は120円/㎏でした。 調べてみるとメッキ業者が多い大都市部では半分近くの単価で施工している業者もいることが分かりました。 ただ、都市部まで運搬していたのでは結局コストは下がりませんから、県内業者と単価交渉を行うこととしました。 メガソーラー発電所建設の話は沢山来ていたので、業者には単価80円/㎏でお願いして、単価を下げる見返りとしてこれからの2年間以内で5000本以上の発注量を提案しました。 金額にすれば1600万円近くになります。 メッキの発注として小さい金額ではありません。もし、コスト高で鋼管採用をあきらめればメッキの発注はゼロです。 業者の営業は会社に持ち帰って検討した結果当社提案を受け入れてくれました。 

 この他にもスクリュー羽根形状を通常のスクリュー曲面ではなくレーザーカットした平面上の板を斜めに溶接する構造としたり、上部架台取り付け部の調整金具のコストダウンを図ったりと細かいコストダウンを積み重ねました。 この結果鋼管杭の価格をコンクリート杭とほぼ同じにすることに成功したのです。

 コストが下がったので先ず自社案件で採用しました。 最初の案件は1MWでしたので、およそ1200本施工しました。 コンクリートのように割れる心配がないので施工性が格段に向上し、施工日数の短縮になった結果施工コストの低下にも繋がりました。 この結果をソーラー発電所開発会社が高く評価し他社案件にも採用されたため、当初2年間で1万本以上、その後の3年間で更に1万本以上の施工に繋がりました。  下記はその第1号案件の写真です。

 

         

 写真で分かる通り、パネル下もすっきりとして歩き回れるようになっています。 杭は溶融亜鉛メッキなので50年程度の耐久性が見込めます。 自社開発した結果、この杭が採用された現場はすべて自社で杭施工を受注できたので杭の売り上げのみならず多大な施工費の売り上げも出来たのです。 また、先に述べたメッキ業者には大量の仕事を発注でき、近隣のレーザー加工業者には大量の羽根等の切断を発注でき、近隣の鉄工所には溶接加工を発注するなど地域経済にも貢献できたと思います。

 しかし、国の精度であるFIT(固定価格買取制度)の買取価格が毎年低下していったことと次第にメガソーラー適地が少なくなっていったことで5年くらい経つとメガソーラー開発は激減し、殆ど無くなってしまったのです。 新しい需要に乗り、素早く開発して事業につなげた結果5年間程度で大きな利益を得ることが出来ました。

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