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お知らせ・ブログ
■ 令和の日本列島改造論____日本人が豊かで幸福に暮らすには、今日本をどのように変えていけばいいかを論ずる
令和の日本列島改造論(その11)
今回は昨年4月8日に本ブログに公開した記事「開発人生記 その7・六脚走行機械にかける夢」の続きとしてのイメージで記述しました。 当該ブログと合わせてお読みいただくと理解しやすいと思います。
六脚走行機械にかける夢(2)―― 日本を変える六脚走行体
六脚走行体が普及すると、日本はどう変わっていくのでしょうか。
日本の国土の大半は傾斜地です。 太平洋戦争中に都会から疎開した人、戦後満州や北方領土から内地へ帰還した人などはどんな山奥でも傾斜地でも水と土地さえ手に入れば、生きていくために開墾し集落を作ったため、一時的に日本の国土の利用できるところは殆どが利用される時代がありました。
日本の経済成長期を経て、このような生産性の低い山村から人々は離れ、多くの山村が消滅し人口の都市集中が進んだ結果、山村部に政治の光は当たらなくなり多くの国土が放置され荒廃することとなっています。
このようなゆっくりと変わっていく日本の本質的な変化を、国をリードする政治家が気付いていないところに日本国の長期停滞の原因があります。
政治が機能しないと平時には効率の良い都市集中が進むことは避けられません。 しかし、平時が永久に続くと誰が保証できるのでしょうか。 戦争が無くても「疫病の蔓延」「大地震」「富士山大噴火」「大規模隕石の衝突」等々、非常事態はいつ訪れるかもわかりません。 非常時にも大多数の国民が困窮しないように備えるのが政治の役目です。 このために国土は放置地・荒廃地を減らし、出来るだけ管理・利用させている状況とし非常時や時代の変化に敏感・迅速に対応できるようにしておかねばなりません。 過去の政権で「国土強靭化」などとのうたい文句がありましたが、このような目線で国土強靭化が進められているとはとても思えません。 土地の所有者さえ不明となり、管理者不在の土地がどんどん増加していることは国土強靭化に逆行しています。 また、菅前首相は国際公約として2050年カーボンニュートラルを宣言しましたが、具体策の言及はなく机上の空論とさえ言われています。
六脚走行機械はこのような日本の状況を根本から変える可能性を秘めています。 その変化を考察してみましょう。
林業の変化
■伐採・搬出コスト低減により輸入材減少、国産材増加
日本の山地山村は殆どが傾斜地です。 傾斜地作業は機械化が困難であるが故生産 性が悪く、殆ど放置状態になっています。 利用するにしても道路が必要で、傾斜地の道路整備はコストが嵩む上、維持コストも莫大です。 このような観点から道路を作らずに山地に進入し、効率的に伐採搬出できる技術が有れば日本の木材コストは劇的に低下します。 国産材のコストが低下すれば現在7割輸入していると言われている外材がほぼ必要なくなります。
■間伐促進による木材品質の向上
現在、個人で植林された山林は殆ど間伐されておらず、密植状態のため木材品質に問題があります。 また、間伐されても搬出経費が回収できないため現地放置で腐らせている状況です。 これらがすべて低コストで搬出利用できるようになれば利用木が大幅増となる上、残された木材の成長が促進され、品質が向上することとなります。
■雇用の増大・若者の参入
木材搬出が機械化され低コスト化すれば搬出にかかわる人員の報酬を向上させることが出来ます。 しかも作業を5Gや6Gの通信機能を使って遠隔で可能とすれば、事務所で伐採作業をすることも出来るようになります。 結果、林業従事希望者が増加し、雇用の拡大、若年層の参入が見込めるようになるのです。
エネルギー政策の変化
■石炭火力発電からバイオマス火力発電へ
国産材の使用が増え、林業が活性化すれば建築材で使用できない端材や曲がり材、製材くず、枝葉などが大量に出てきます。 搬出コストが低下すれば雑木林から燃料木として搬出できます。 これらを利用してバイオマス発電燃料を作ることが出来ます。 バイオマス発電所を近隣に設置すれば、安定した電気を供給できます。 バイオマス発電所を主電源とし、周辺の太陽光発電、小水力発電、風力発電等と仮想発電所技術でネットワーク化すれば、大きな安定電源発電所として機能するので、石炭火力に替ることが出来るのです。
■輸送時のCO2を削減
現在のバイオマス発電は燃料ペレットの多くを輸入しています。 輸入ペレットは海外での違法伐採・森林破壊を助長しているとの批判もありますし、そもそも伐採からペレット化して日本に輸入し、発電所に届くまでにどれだけCO2を排出しているのでしょうか。 バイオマス原料の海外調達は廃止しなければなりません。 地産地消の自然エネルギー創出はこれからの国の使命です。 国産材を使用し端材等燃料化出来るものはすべてペレット化するとともに雑木林は燃料専用として搬出する、また解体廃材も出来るだけ燃料化すれば日本の火力発電所から石炭を駆逐できるのです。
■石炭火力発電所の座礁資産化防止
既存の石炭火力発電所は世界の脱炭素化の潮流に押され、座礁資産となる恐れが指摘され、大手電力会社の経営課題ともなっています。 国産材由来の木質ペレットが大幅増産となれば、まず石炭との混焼から始めるのです。 国産ペレットが十分な量を安定供給されるようになれば混焼量を徐々に増やし、最終的にはペレット専焼を目指すのです。 批判の多い石炭火力が自然由来のエネルギーへと変換することが可能となります。
里山の変化
■里山に産業ができる
林業が低コスト化し、「稼げる産業」となれば参入者が増加し里山の整備が進みます。 国が力を入れて土地の集約化を進めれば、里山には林業・農業・畜産・観光・娯楽・健康づくり・体験等の産業が育つのです。 里山が荒廃せず常に人の手が入っていれば、時代の変化により柔軟に里山の利用形態を変え、国のエネルギー安保や食料安保にも寄与することが出来るのです。
農業の変化
■中山間地農業の活性化
グローバル化の波を受け日本の農業は衰退の一途をたどっていますが、特に中山間地は人口の都市集中による過疎化で耕作放棄地が増え、山間地では集落消滅も加速度的に進行しています。 このため集落と森林部を隔てていた里山が消滅し、害獣が住宅地まで出没し園芸作物の被害も急増しつつあります。 このような状況が進行すれば日本の食料自給率はますます低下し、食糧安保上大きな問題があります。
中山間地農業の問題点は、傾斜地ゆえの生産効率の悪さです。 六脚の機械をロボット化し、耕起・施肥・播種・除草・収穫等を自動化すれば効率の悪さと人手不足を軽減できます。 また、果樹等の園芸による高付加価値化も傾斜を克服できるロボットで省力化が可能です。 ロボットを高度化し、自動化すれば工場のように24時間稼働として効率化することも夢ではありません。 これにより、中山間地農業が活発となれば、日本の国土を広く有効に使うこととなるのです。
畜産業の変化
■家畜の福祉を考えた飼育に移行が可能
これからの畜産は家畜の福祉を考えた飼育をしなければ世界で通用しなくなります。 養鶏に代表される密集飼育は世界的にも批判があります。 林業や農業と組み合わせた中規模畜産業を日本の多くの里山で展開できれば、飼料自給・人員配置の効率化などで家畜にやさしく低コストの畜産業が展開できるようになることでしょう。
■家畜疫病による全滅リスク軽減
一つの業者が一つの大規模な施設で畜産経営を行えば、伝染病の発生で全滅リスクが出てきます。 中規模で分散した経営とすることで全滅リスクを回避し、業者の倒産や一時的な流通量の激減を防ぐことが出来ます。 里山での閉鎖地域・閉鎖施設の分散経営が国の食糧安保にも寄与します。
建設業の変化
■工事用仮設道路を廃止
道路から離れた場所で行われる渓間工事等では機材搬入用の仮設道路が必要となり、相当の費用と工期を要するが、掘削等の重機械を歩行機械とし材料搬入は索道やポンプ圧送とすることで、仮設道路無しでの作業が可能となる。 仮設道路廃止により費用が軽減されるのみならず、環境破壊防止にも寄与できると思われる。
■道路法面除草・清掃の機械化
道路法面は傾斜がきついため、除草・清掃の機械化が出来ていませんでしたが脚式走行機械であれば自由に走行可能です。 しかも上下左右任意の方向に進むことが出来るため傾斜を横行で上昇し、直角方向に作業しながら走行することが可能ですから抜群の作業性を発揮できます。
災害復旧体制の変化
■歩行進入による迅速現場到達
走行機械は道路が無ければ災害現場に到着することもままならないが、歩行機械であれば近隣まで輸送を行い、災害現場付近からは歩行進入すれば道路が無くても必要個所にピンポイント到達が可能である。 圧倒的に復旧開始が早まり、人命救助と早期復興に大きな貢献ができる。
■復旧用重機の常時確保
現在、災害復旧を想定した重機械はどの自治体も常時確保はなされていない。 大規模災害時は近隣の土木建設業者や解体業者頼みとなっている。 自衛隊が派遣されれば自前の重機を持参するが、数量には限りがある。 林業用の機械に対して導入時に補助金を交付し、交付条件の中に災害時には要請に基づき災害地にオペレーター付きで派遣することとしておけば災害復旧重機の常時確保が成されていることとなり、国土強靭化に貢献できるのである。
人材育成環境の変化
■開発支援による先端技術者増加
六脚機械の走行制御は相当の期間をかけて進化させる必要がある。 そこそこの程度で実用化し、使い勝手や安全性、操作性やスピードなどを多くの参加者を募って進化させるのです。 進化に必要な「プログラミング技術」「AI技術」「各種センサー技術」等の高度化を国の助成により行えば、これにかかわる専門技術者が増加し、日本のロボット技術の底上げを図ることが出来るのです。
国としての決断が鍵
このように、道路が無いところにでも自在に進入し、高効率に仕事をこなせる機械が出現すれば日本にある広大な未利用地を有効利用する道が開け、日本が大きく変わります。 しかしそのポイントは、いかに広い面積の土地を一括して開発できるようになるかにかかっています。 機械化を通じて効率化を追求するには規模が必要なのです。
日本の土地政策は戦後GHQ主導で行われた農地改革により農地所有が細分化してしまいました。 山林は農地改革の対象ではありませんでしたが、当時は山中のわずかな平地でも田畑に開墾されており、現在では現況山林の中に多くの小さな土地が存在するのは、かつての農地が山林に変わったものです。 このような山林でさえ細分化された現状では所有者や境界の特定に多大な時間とコストを要し、機械化された大規模な植林や伐採などができず国土の効率化された利用を阻んでいます。 この解決は国として根本的に土地政策を時代に合ったものに変更する必要があるのです。
それでは、具体的にはどうすればいいのでしょうか。
目標は「管理者不在の土地」を無くすことです。 この前段階として「小規模山林の解消」を進める必要があります。 大規模山林であれば管理希望者は沢山いますが、小規模では誰も管理したがりません。小規模山林を集積し、大規模化することで管理者を作ることが出来ます。
日本の土地には固定資産税が課せられていますが、評価額が30万円未満であれば課税されないため、小規模な山林は課税されていません。 このため、小規模な山林は相続登記さえなされずに放置されるようになったのです。 管理できない人には所有する資格はありません。
まず、山林(現況山林を含む)の固定資産税に最低税額を設けるのです。 どんなに小さな土地でも最低税額1万円程度にし、あとは坪当たり1円程度の課税とし30万円未満の課税免除は廃止するのです。 これにより未利用の小規模山林は隣接山林と合筆が進むはずです。 しかし、固定資産税を払わない土地も出てきますから、この土地は管理者不在土地として国もしくは自治体が接収するのです。 接収した山林は管理できている隣接山林所有者に売却し、合筆を促進するのです。
概ね山林は最低1k㎡程度を単位区画とするまで集積し、地域ごとにいくつかの区画を集めて開発計画を作るのです。 開発計画参加の主体は木質ペレットが必要な電力会社や製鉄会社、パルプが必要な製紙会社、木材が必要な製材会社、燃料が必要なエネルギー会社などが考えられますがこれらの会社に開発計画書を提出させて50年~100年単位で貸し付けるのです。
このようにして森林を大規模化すれば固定資産税の増収効果もありますし、公共事業実施の円滑化にもつながると考えられます。 何よりも「利用して収益を上げる」人が所有することにより産業の活性化や雇用の増大、税収の増加が図れ、荒廃地の解消により国土強靭化に資することとなります。
国の政策と技術の進歩がマッチした時、その国は国民の幸福度向上に向かって大きく前進することが出来るのです。