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■ 開発人生記_________機械工学を学んだことを生かして事業に必要な様々な機械を開発、その道のりを公開

開発人生記(その3) グルンドドリル工法の導入~プッシュプル工法の開発(前編)

今回紹介する開発にはかなり大きな時間的・資金的・精神的エネルギーを注ぎました。 国外の技術を導入し、それを地元で受け入れてもらえる形に開発しなおし、全く新しい顧客を開拓して事業化しました。 最終的にはこの事業での投下資金に対するリターンはわずかなものでしたが、当社の企業イメージ向上取引先拡大には大きく貢献し、後の新事業展開にも大きな力となったのです。

また、富山の零細企業が、日本中の人が知っているような大企業に提案しても、それが面白くて合理的であれば、採用される場合があることもわかりました。 行動する者だけが新しい扉を開くことが出来ることを確信できた開発活動でした。

話が長くなるので、2回に分けて紹介いたします。 今回はドイツで管を引き込む推進機械を見つけるところまでです。

グルンドドリル工法の導入~プッシュプル工法の開発(前編)

 

 私が46歳のころ、会社に土木で使う締固めローラーのメーカーである日本ボーマクという会社の営業員と社長が訪ねてきました。 ボーマクとはドイツの路盤を転圧するローラーのメーカーで当時は振動ローラーでは世界のトップメーカーで、日本ボーマクはそこの日本法人です。

以前に書いたように私は建設業関連の業界にいて、建設機械販売レンタルも行っていたので、ボーマク社の製品も何台か所有し、時々販売もしていましたから来ていただいたのだと思います。 いろいろな話をして話が弾むうちに、来年4月頃にドイツ世界三大建機展の一つである「バウマ展」という展示会が有るので、日本ボーマクの社員や取引先を誘ってドイツボーマク社訪問・展示会見学・ドイツ観光を計画しているが、一緒に行きませんかとのお誘いを受けました。

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当時、外国といえば社員旅行でアジアの各国には何度か行っていましたが、ヨーロッパにはいったことが無かったことと、世界中から最新の建設機械が集まる展示会はぜひ見たいと思い「ご一緒させてください」と即答しました。 翌年の1995年4月に十数名で、出入りを含めて8日間のドイツ旅行が催行されたのですが、誘っていただいた肝心の日本ボーマク社長は病気になって参加されませんでした。

「バウマ展」はうち2日間、ミュンヘン市の会場へ見に行ったのですが、先ずはその広さに圧倒されました。 当時、日本での建機展は幕張メッセや晴海ふ頭で開催されたものを数回見に行ったことが有るのですが、まったく違う規模の展示会に圧倒されました。 会場の端から端までただ歩くだけでも20分くらいかかるのです。 大型重機展示用の広大な屋外スペースと小物や部品展示用の屋内スペースがあり、3階建ての展示場が10棟くらいありました。 同行した人たちは殆ど半日ほどでミュンヘン市街の観光に行ってしまいましたが、展示物すべてを見たい私は2日間フルに会場を回りました。 場内には私が食べられるようなレストランや売店が殆どなかったため、1日目はフランクフルトを買って食べ、2日目はバナナを2本持参して会場へ行き、昼食時間も惜しんで食べながら見て回りました。

この展示会に行くに際して、新しい機械の開発をいつも考えていた私は、私の考えているいくつかの物がすでに開発されているかどうか、確認したいと思っていました。

そのうちの一つは当時開発中のもので開発人生記 その1」で紹介した「丸い竪穴を掘るバケット」で、もう一つは地中に配管を非開削で敷設する「推進工法」を「押す」のではなく「引っ張る」ようにしたものが無いかということでした。

開発人生記 その2で書いたように当時は富山県で下水道整備計画がスタートした直後で、下水道関連の仕事がどんどん増えていたので、私は省力化できる機械のアイデアをいくつも温めていました。 その中でも下水管を地中埋設する際に掘らないで押し込む「推進工法」はいろいろな会社が開発し提案していましたがいずれも工費がかなり高価であるので、私はもっとコストを安くして提案したいといろいろな工法とそれ用の機械を開発中でした。

当時私が開発し、提案した推進工法には「逆ぞりアーム簡易推進工法」(下記掲載 参考パンフ参照)、「サイレントパワー工法」(下記掲載 カタログ表紙参照)などがあり、いずれも低コストでしたが推進ですから管を押し込むのです。 しかし、押し込むより引っ張った方が管の方向制御が簡単であろうと常々考えていました。

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会場をくまなく歩いていた私は、ついにあるコーナーで、引っ張る推進機械を見つけたのです。 それは地中管埋設工法のコーナーで、ドイツやアメリカのメーカーがHDD工法(誘導式水平ボーリング工法)施工機を何台か出品していました。

 HDD工法というのは、最初に先端に発信機の付いた細い鋼製ロッドを方向コントロールしながら地中に押し込み、所定の立て坑に到達させた後、そのロッドに埋設する管(主にポリエチレン管もしくは鋼管)をつないで引き込む工法です。

当時HDD工法は日本ではほとんど知られていませんでしたが、欧米ではメーカーが沢山あり、割とメジャーな工法だったのです。 その中で、ドイツトラクトテクニク社が出品している「グルンドドリル」という機械がありました。

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しかも、トラクトテクニク社のコーナーにはなんと日本人説明者がいたのです。 伊藤忠建機がトラクトテクニク社の日本総代理店となり、この機械を日本で販売していくために、この展示会にも社員を派遣していたのです。

早速私はいろいろな説明をしてもらいましたが、近々この機械日本に輸入し、名古屋試験運転をするので見に来ませんかという話も頂きました。 私は是非とも見たいので、場所や日時を後日案内してもらうこととし、名刺交換して帰途に就きました。 私が探していた機械の一つが実際にあったわけで、ドイツまで見に来たかいがあったと思い、非常に喜んで帰ったものです。

翌月、東邦ガス社所有の名古屋グラウンドで施工試運転を行うという案内を頂きました。 当時は若かったので、出張は殆ど車で移動していました。 名古屋位なら日帰りです。

でも、見に行くのに車で一人で行くのは能がないと思い、興味を持ちそうな人を乗せていこうと思い立ち、T市の水道局を訪ねました。 このような機械で施工するのは富山県では水道管が最も多いだろうと考えたからです。

水道局を訪ね、こんな新しい工法に興味を持って下さるのはどなたかと聞いたところ、M氏を紹介されました。 M氏に話したところ、「是非見たい、有給休暇をとってでも一緒に見に行きます」とのこと。 M氏は上司に話したところ、「最新の工法の勉強であるから、業務として見に行ってよろしい」と出張許可が出ました。 当日は私の車でM氏と二人、朝早く出発し名古屋へ向かいました。

当日はグラウンドの端に小さな立て坑を掘り、そこからポリエチレン管を50mくらい引き込むのです。 ロッドの圧入50mで1時間くらい、φ100mmポリエチレン管引き込みで1時間くらい、その他の段取りで1時間くらいで合計3時間くらいでした。 50mを開削で施工すれば1.5日くらいかかるでしょうから非常にスピーディで、従来工法に比べてかなりコストダウンできるであろうということを確認し、帰途に就きました。

今回はここまでで、次回はこの機械を導入しての営業活動や開発活動の進展・変遷等を紹介したいと思います。

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